忍者ブログ

漫画家まどの一哉ブログ

   
カテゴリー「読書日記」の記事一覧
読書(mixi過去日記より)
「予言者の名前」
島田雅彦
 作

オウム事件が合った頃は、カルト教団を材料に宗教の問題を扱った作品が多くあった様な気がする。
自分はそのちょっと前から、それっぽいハナシを考えて「クイックジャパン」に幾つか発表したが、世の中みんなやりだしたのでイヤになってやめた。
それでもカルトや宗教は、基本的に興味のある題材なので、古本屋でこんなものを見つけると、短いものだしちょっと読んでみようかと思う。

宗教の世俗化が進んでいて、わりとどの宗教からも等距離でいられる日本人ならではの視点で描かれた宗教小説。ワタルとムルカシという二人の宗教家(予言者)が、既存の宗教的立場に次々と疑義を投げかける。その内容が観念的な言葉でそのまま語られる。
といっても、小説だから難しい論理を展開する訳ではないが、いわゆる生活や風景の描写など、ふつうの小説で描かれる様な部分はほとんどない。したがって面白いことは面白いが、登場人物に自分を重ねたりして味わうことはできません。短ければこんなのもあり。

文庫本は巻末に中沢新一の解説がついているが、これがよかった。ただし島田雅彦を誉め過ぎ。島田雅彦は求道者とは真逆の、フツーのインテリオヤジという印象が自分にはある。

拍手[0回]

PR
読書(mixi過去日記より)
「富士」
武田泰淳
 作

戦時下、富士山麓にある精神病院。国家総動員時にお国の役にたたない患者達と、愛を持って看病にあたる医師・看護士達の物語。
とはいってもリアリズム小説ではなく、登場する個性豊かな患者達の病状は全く作者の創造で、自分が宮様であると信じる元精神科医、一言も言葉を発せず、哲学的ノートを綴る少年、自分の育てた伝書鳩を待ち続ける男、研修医の子種を宿したとふれ回るキリスト者などなど…。

異常者・正常者の枠を取り払った、極めて強烈なキャラクター達が、滔々と思念的弁舌をふるう、グロテスクな魅力に満ちた観念小説。だが、単なる思弁小説でないのは、次々と巻き起こる事件に沿って話が進むからであって、例えば鳩を求めて煙突に上る男・院長宅襲撃・股間に下げた懐中電灯を男根に見立てて医師を襲う女・宮様のつもりで皇室に接触する元精神科医・放火・殺人など、正に異常事態しか出現しない。

もともとこの精神病院の設定自体が、リアリズムならぬシュールレアリズムの世界で、戦時下の一般社会とはかけ離れた、「スミヤキストQ」が忍び込んだ癲狂院のようなものとなっている。

まさに小説という分野ならではの面白さで、実際日常会話でべらべらと神学的哲学的思念を披瀝することは滅多にないし、漫画では考えられないネーム量になってしまう。映画もしかり。それが気にせずスラスラ読めてしまうのが、小説が言葉の芸術たる所以なんだろうな。

●たとえ漫画でもこれが俺にはできないんですよ。いや、たとえナレーションであっても、言葉で説明するのができないの。漫画の中で言葉に独立した役割を与えられないんです。
人物の行為の補足として「しまった」とか「よし行くぞ」とか、あるいは日常会話の「2万ほど、なんとかならない?」とか「なんだ、先行ったと思ってたよ」とか、そんなです。
友人の斎藤種魚、西野空男など「架空」派漫画家には観念的な言葉をうまく使う人が多い。

拍手[3回]

読書mixi過去日記より
「神は妄想である」宗教との決別
リチャード・ドーキンス
 著

生物学の世界的権威、かのドーキンスが書いた警世の書。かつて有名な利己的遺伝子説に触れたときは、どうももうひとつ納得いかなかったが、この本はいい!俺は快哉を叫ぶ。

それにしても西欧社会、とくにアメリカにおける聖書原理主義による病理には恐ろしいものがある。物心つかない幼い頃に、教え込まれる聖書の非合理と迷信が、大人になってもいかに精神を縛り続けるか。進化論を否定し、地獄の存在におびえ、子どもにたった一つの価値観を強要し、異教徒を悪魔視して顧みない。そして、敬虔な宗教者というだけで罪は目こぼしされ、反対に無神論者というだけで忌み嫌われるという矛盾。
また自爆テロに走るイスラム原理主義者が、報復感情ではなく、天国を夢見ているという恐ろしさ。

いま、ようやく無神論者は声をあげるべき秋である。
戦う生物学者ドーキンスは、容赦がない。科学と宗教は全く相容れない分野であるから、おたがい踏み込むことはせずに、共存しよう。という一見平穏な立場に意義を唱え、神の問題は正しく科学の課題であること、そして論証を積み重ねることにより、神の存在を否定することの重要性を説く。
また、地球上の生物の偶然とはとても考えられない多様性を、誰か(神)が設計したものと考える、いわゆるインテリジェントデザイン説は、進化論(ダーウィニズム)を知らない蒙昧であることを教える。
そしてそして道徳のよってきたる所以は宗教ではなく、時代精神の反映によるというところまで。
いいぞドーキンス!がんばれドーキンス!

現在世界中で勢力を増す宗教原理主義が、いかにテロと戦争をまきおこしているか。うれしいことにこの本はアメリカでベストセラーとなったそうだ。この先、世界中の宗教の世俗化にちょっとは希望が持てるのか?

拍手[0回]

読書「徳田秋声の周囲」
川崎長太郎
 作

婦人を亡くして憔悴する文壇の重鎮徳田秋声。師を慰めるため集まった門下の中に、長太郎と年かさの女順子がいた。その順子に親しげに近づかれる川崎長太郎。

私は、反射的に、五体を棒みたいに硬直させました。東京の空気を吸って、既に二、三年経っていますが、まだひと見知り癖も抜けきらない、からきし内気な田舎者でしかありません。
「あなた、お友達になって下さいな。今、私一人で寂しいんです。一寸、世間から身を隠しているというふうなの。__お友達になって下さい。私、とてもフライよ」
中学も満足に行っていない私には、第一「フライ」とは如何なることを意味する言葉か、さっぱりのみ込めかねますし、こんな女の言うことなど、ゆめ真にうけてはなるまいと警戒心怠り亡く、が、その実、_____


この辺の文章がおもしろいなあ。いいなあ。わくわくしながら読みだした。やがて長太郎はこの放蕩文学女子の後をうかうかと追いかけるざまになってしまうのだが、その順子はあっという間に師匠徳田秋声の内縁に納まって、この小説は意外にも川崎長太郎の私小説というより、世間的には老醜をさらす徳田秋声のスキャンダル報告みたいになってしまった。これがまた面白い。といっても残された子供たちとの家庭が破壊されたあげく、女に捨てられるといったよくある内容。それでも愉しく読めればなんでもオッケー。

拍手[0回]

読書mixi過去日記より
「白い果実」
ジェフリー・フォード作
(2004年 国書刊行会)

1998年世界幻想文学大賞受賞作。
独裁者ビロウが支配する理想形態都市(ウェルビルトシティ)。主人公の一級観相官クレイはビロウの命を承けて、辺境の鉱山の街アナマソビアへ赴く。この世の楽園に実るという「白い果実」を手に入れるために…。

予備知識無しで読みだして、始めて気付いた。これってエンターテイメント!
娯楽の王道を行くストーリー構成。ちゃんと怪物との戦闘シーンなんかもあって笑ってしまう。だが、スパイア鉱石を掘り続けたあげく青く石化する人々。人間の外見・体格などを精密に観測し、性格・能力までも決定する観相学。人間並みに進化させられた猿の管理人、などなど、繰り広げられる空想的イメージがただごとではない、奇想文学の怪作!

冒険ファンタジーといっても流行っているものには、RPGの世界でおなじみのネタが多いが、既成のイメージに浸って安心してると、脳が劣化するんじゃないかと思う。未知の空想世界に独力でついていかなければ。

拍手[0回]

読書mixi過去日記より
「人間の条件」
アンドレ・マルロー 作


1926年、中国共産党は蒋介石率いる国民党と、国共合作の革命政府による北伐を展開していた。しかし翌年4月、上海において蒋介石は共産党に対する武力弾圧を開始。弾圧の中で懸命に党を守ろうとする中国共産党員、清・ジゾール(日中混血児)、爆弾を抱えて独り蒋介石を狙うテロリスト陳(チェン)、ロシア人カトフ、流浪のベルギー人エンメルリック。4人の若き共産党員を中心に、フランス人財閥、零落中国人商人、秘密警察長官までを交えて、争乱下に生きる人間の苦闘と敗北までを描く名作。
物語は起伏を孕み、過激な事態が連続するが、一貫して抑制された筆致で人物の内面が描写される。

かつては新潮文庫などでも普通にあったが、近年はめったに新刊で見ない世界名作文学。今回ボクの読んだのは、1962年発行の新潮社世界文學全集で、なんと10年以上前に要町の路上に、新品同様のものが捨てられていた中から、数冊拾ってきたのだった。

拍手[0回]

読書(mixi過去日記より)
「思想の中の数学的構造」
山下正男 著
(ちくま学芸文庫)


もしこの内容に意味があれば、ひょっとして存在論的真実にたどりつけるかも?と、興味津々で購入した本。
内容はデカルトからレヴィ・ストロース、中国の易学まで。思想の中に数学的構造を発見して楽しむエッセー。
数式が少なく(あってもナナメ読み)、数学が苦手な自分でも、とりあえず完読できたのだが…。

例えば代数構造を代表する群論。
レヴィ・ストロース言うところの親族の基本構造、易における八卦・六十四卦における陰陽の組み合わせ、ピアジェの論理学における命題・否定命題・連言命題(~と)・選言命題(~か~)間の操作、哲学史上における機会論や弁証法と唯物論や観念論の組み合わせ。これらの操作全てにクラインの四元群という群構造が適用される。なるほどそうかもれない。
でもだからどうしたの?

例えば歴史観にも数学的モデルを対応させることができる。例えば退歩史観や進歩史観は、y=文明の高低、x=時間とするとy=ax+bという一次関数で表現できる。文明が指数関数的に上昇することになると当然y=ax2(二乗)+b(二次関数)となって、グラフはググッと上昇。さらに文明を循環史観で考えると、ボクの苦手な三角関数的モデルを適応して、y=sinx+bの波形曲線のグラフ(進歩と退歩が循環して波形を描くワケね)。これがさらに上昇型循環史観のグラフへと変化していきます。なるほど。
でもこの適応が意味あるの?

例えば按分比例、比例配分は古代ギリシャや漢代中国で、配分の正義のために適用されており、配分の正義とは階層の思想に裏付けられたものである。とかなんとか…。

例えば個の独立という思想をライプニッツのモナド(おなじみの単子論)が含むようになって、関数の概念が発達してきた。神と被造物、君主と臣民と言った関係において、神・君主=独立変数として、それらに従属して機能(function)するものとして様々な社会的関係(従属変数)が関連づけられる。これが関数の概念を育てる。

などなど、他にも思想のなかに数学概念が次々と見いだされるが、
でもそれが分かったからどうなんだ?
というのが正直な感想。まあ、数理哲学や論理学は数学の楽しみと近いところにあるが、社会科学となると数学的把握はピュアすぎる。もっと生臭いもんやから。

拍手[0回]

読書
「巡査の首」
又吉栄喜 作


沖縄本島からさらに南、日本と国交のない独立国である島国「垂下国」。珊瑚礁の島「謝名元島」で暮らす克馬と早紀の兄妹は、密かに「垂下国」へ潜入する。それはタキおばあの遺言どおり、おばあの遺骨を戦時下の「垂下国」で死んだおじいのそばに葬るためだった。
戦時中、統治者でありながら、巡査として正義と公平を貫いたと聞き伝えら得るおじい。そのおじいが垂下島の原住民「阿族」に首を切り落とされたのは、ほんとうだったのか?また、「阿族」のみが扱う興奮剤カミノキの酒とは…。

統治者である日本人から差別されて生きる琉球人。その琉球人からも蔑まれる垂下国人。さらに差別される阿族たち。てっきり現代沖縄を舞台にした小説だと思って読み始めて驚いた。しかしこのモデルとなる戦時中の舞台は台湾であり、高砂族であろう。事実は一方から見れば正義であり、一方から見れば犯罪である。同じ行為が支配であり、友愛であった。当事者は当事者の立場からすれば常に英雄であった。

けっこうゴツゴツとした文体で、ちっとも滑らかさがなく、最初は読みにくかったが、馴れるとスキがなくてスピードがでるよ。

拍手[1回]

読書
「山ン中の師見朋成雄(シミトモナルオ)」
舞城王太郎 作


福井県の田舎町に住む中学生の成雄は、オリンピック強化選手に誘われるほど足が速く、頑健だ。代々背中にびっしり毛が生える体質で、その動物的な自分を嫌い、通称モヒ寛なる山中に住む書道家中年男と相撲を取ったり、書道を習ったりして過ごしている。
ある日森の中で馬に出会い、モヒ寛が瀕死の大けがをしているのを発見してから、事件は展開。
秘密の館で繰り広げられる、女体盛りとカニバリズムの宴とは?

前半なかなかに味わいのある文体で、主人公とモヒ寛の珍妙な生活を描いておもしろく、これはこのまま純文学として終わるのかなと思っていると、後半なぞの刺客たちや、器として利用される女たちが登場してから、加速度的にエンターテイメントとなり、あっというまに読まされてしまった。それはどっちでもいいが、いずれにしても退屈しないのは文章がきれいだからではないか?と素人ながら感じた。

拍手[0回]

読書
「霊魂だけが知っている」
メアリー・ローチ 著


はやりのスピリチュアルや、かつてのニューエイジとは無縁のサイエンス・ライターによる心霊研究といったことならば、昔から大好きだ。やっぱり自分だって死後の魂の存在を全否定して平然としていられるほど強くないもの。はたして霊魂について現代科学はどこまで検証し得たか?

興味深く読んだが、ちょっともの足りなかったのは、8割がかつての歴史上の心霊研究史の愉快な逸話で占められていて、今最先端の研究については少ししか触れてなかったところ。やはり取り上げるに足る成果が少ないのだろうか。
それでも過去の心霊研究は面白かった。ちょうど電話やラジオが普及し始めた頃、人々はすわ霊界とコンタクトできると思ったようだ。そのころのエジソンやテスラのエピソードは有名なものも多いが、やっぱりおもしろい。

近年の研究で気になるのは、電磁波が充満している部屋など、電磁場にさらされると、メラトニンレベルが下がり、脳の右側頭葉に微小発作が起きて幻覚が生じやすくなること。右側頭葉の刺激によって心霊体験が生じることは、立花隆の著作でも触れられていたので、どうやらポイントらしい。
また、人間の耳に聴こえない18〜19ヘルツの超低周波を受けると、血流が下がるなど身体へ悪影響があり、視覚異常をも引き起こす。心霊スポットとは、実は超低周波スポットではないか?

臨死体験の研究も諸説あるわけだが、大脳皮質と脳幹のすべての機能が失われている時に、意識・認知・記憶が機能しているようにみえるというのは驚きだ。つまり肉体としての脳は、幻覚すら見ることができない状態なのだから、肉体外の意識体を考えざるをえないわけだ。
ヴァージニア大学病院のある手術室には、天井近くに開いたノートパソコンが上を向けて置いてある。そこに映し出されている画像は手術台の視点からは誰も見えない。つまり肉体を離れ、天井近くから自分が手術されている様子を見た者にしか見えない仕掛けになっている。この興味深い実験の結果は未だ報告されていないようである。

拍手[1回]

  
カレンダー
04 2026/05 06
S M T W T F S
1 2
3 4 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
フリーエリア

「世の終りのためのお伽噺」
アックスストア
「洞窟ゲーム」
アックスストア 西遊
「西遊」
amazon ヨドバシ.com
アックス75号
アックスストア

祭り前

秘密諜報家
最新コメント
[08/13 筒井ヒロミ]
[02/24 おんちみどり]
[05/10 まどの]
[05/10 西野空男]
[01/19 斎藤潤一郎]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
madonokazuya
性別:
非公開
自己紹介:
漫画家
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
カウンター
カウンター
フリーエリア
Copyright ©  -- まどの一哉 「絵空事ノート」 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]