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漫画家まどの一哉ブログ

   
カテゴリー「読書日記」の記事一覧
読書(mixi過去日記より)
「閉ざされた城の中で語る英吉利人」
ピエール・モリオン作


ピエール・モリオンとは仮名で実はフランス暗黒文学の旗手マンディアルグの筆になる、奇想エロティック小説。
ブルターニュ地方のとある海岸から、引き潮時のみ道路を伝って往けるガムユーシュ城。招待を受けて投宿することとなった主人公は、城内で日に夜を継いで繰り広げられる性の狂乱に参加することになる。城主に命じられるがままに、破天荒で残虐な性行為に没頭する数名の女と黒人男。そのシュールな空想世界が美文によって構築されていく。 ではその一節。

 哀れなエドモンド!皆んなの顔がお前の臀を覗き込んでいた。
 誰もがお前の苦痛の一部始終を見逃すまいと、そしてお前の叫び声が咽喉をかき切られた獣の喘ぎに変わっていき、体内のおそろしいやけどで、少しずつ、お前が意識を失い、お前の肉体が生々しい屍体に似た白堊のようなふやけた外観を帯びてゆくあいだ、私たちはおまえの尻たぶの間から血と水気の混った一筋の液体が流れ出て、寝椅子の布を濡らしていくのを眺めていたのである。

てなかんじ。じつは自分はシュールや幻想文学は大好きだが、その仲間の「血と薔薇」的な残酷とエロスの世界はちょっと苦手で、薄い文庫本ながら読了するのにだいぶかかったよ。ほな、読まんかったらええやん!。
(生田耕作訳・中公文庫)

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読書(mixi過去日記より)
「王様の花嫁」
ホフマン作


海外古典幻想文学の重鎮、というかボクの大好きなE・T・A ホフマンは数編のファンタジーを書いているが、そのうちのひとつがこれ。
ホフマンの書いたファンタジーと言えば、バレエ「くるみ割り人形」として有名な「くるみ割り人形と鼠の王様」があるが、これも同様に奇妙奇天烈なお話。野菜の栽培に熱心な主人公の娘は、ある日畑で抜いた人参に嵌まった指輪を拾うが、それは野菜の精(妖怪)からの婚約指輪だった。占星術に凝った父親の進めもあって、娘は人参の王様に嫁入りしようとするが、野菜の豪華宮殿と思わされていたものは実は…云々といったストーリー。でもこの設定どこかで聞いたような気がするのは、やはり絵本や児童文学に翻案されているのでしょう。
ちなみに「くるみ割り人形」の方は子どもの頃、少年少女世界名作文学全集で読んで、なんとも不気味な印象を持ったが、齢長じて大人用を読んでみても、その印象は変わらなかった。
ちなみにホフマンの他の著作はファンタジーではなく、頭をくらくらさせる真性幻想文学であります。

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読書(mixi過去日記より)
「白鯨」
メルヴィル作

以前途中まで読んでほったらかしていたメルヴィルの「白鯨(MOBY-DICK)」読了した。
この小説、さぞや波瀾万丈の海洋冒険譚と思いきや、なんと話の半分は捕鯨業に関する蘊蓄で、しかも実際白鯨にめぐりあって格闘するのは、物語もようやく終わる第百三十三章から百三十五章だけというあんまりな構成。しかし物語部分は娯楽性たっぷり、キャラクターの書き分けもサービス満点だよ。なにより魅力的なのはその散文詩的文体であって、例えば…

●結ぼれ、捩れ、皺寄って節くれ立って、憔悴した峻酷不屈の面魂(つらだましい)、眼は廃墟の灰燼のなかになおも赤く燃える炭火のように爛々と、剛毅不撓のエイハブは澄みわたった朝の大気のなかに立ち、ひび割れた兜のような額を、空の麗しい乙女の前額に向けてかざしている。

●「跳ね出た!あそこに跳ね出た!」あたかもその測るべからざる威嚇の行為で、われとわが身を鮭のように天へ投げ上げたときの叫びだ。まことに忽然として紺碧の海原に出現し、さらに紺碧な空の輪郭に縁どられて浮彫になったため、彼の衝き揚げた水沫(みずしぶき)は、しばし氷河のように眩しさに堪えられぬほど燦々(きらきら)と光り、やがてその最初の眩い強烈さから次第次第に色を薄れさせつつ立ち迷って、谷底を渡る驟雨に似た濛々たる霧に変じていった。

クーッ、カッコイイ!僕なんか、最近流行りの小説にチャレンジしても、文体に鑑賞するところがなくてウンザリして数ページで止めてしまうことが多いが、その点こういう文章は味わいたっぷりですね。とはいっても訳文ですけどね。

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