漫画家まどの一哉ブログ
「未見坂」
読書「未見坂」
堀江敏幸 作
とある小さな街の人々の日常を描いた短編集。
個々の話は独立しているが、ゆるく繋がっている。
いちばん良かったのは次の話。
■戸の池一丁目
家族のものが亡くなって、残された義母と二人暮らしを続ける主人公の男。義母の具合がわるくなって以来、三叉路の角地に建つ団子屋を引き継いでいる。店の裏地には、動かなくなった旧式のボンネットタイプの大型バスが放置されていて、それはむかし男が移動スーパーの商売に使っていたものだった。ある日路線バスに乗り違えてやってきた、古い知り合いの娘と幼児。男の脳裏には移動スーパーを走らせていた頃のいろいろな思い出がかけめぐるのだった。
他にもバラバラになりかけ、またなってしまって進行中の様々な家族の様子が、いろんな家業のやりくりを通して描かれる。地方都市ゆえか、酒屋や、床屋など、親の代から引き継いだ商売の設定が多い。そんな場合、子供の目線で大人たちを描くのは定番で、それが分かりやすいのだろう。個人的には子供のこころの揺らぎに興味はないが…。
それにしても静かな筆致で味わいがあり、露骨な事件性もなく、もちろん狂気も幻想性もない。正統派の日本文学とはこういうものかという気がした。
堀江敏幸 作
とある小さな街の人々の日常を描いた短編集。
個々の話は独立しているが、ゆるく繋がっている。
いちばん良かったのは次の話。
■戸の池一丁目
家族のものが亡くなって、残された義母と二人暮らしを続ける主人公の男。義母の具合がわるくなって以来、三叉路の角地に建つ団子屋を引き継いでいる。店の裏地には、動かなくなった旧式のボンネットタイプの大型バスが放置されていて、それはむかし男が移動スーパーの商売に使っていたものだった。ある日路線バスに乗り違えてやってきた、古い知り合いの娘と幼児。男の脳裏には移動スーパーを走らせていた頃のいろいろな思い出がかけめぐるのだった。
他にもバラバラになりかけ、またなってしまって進行中の様々な家族の様子が、いろんな家業のやりくりを通して描かれる。地方都市ゆえか、酒屋や、床屋など、親の代から引き継いだ商売の設定が多い。そんな場合、子供の目線で大人たちを描くのは定番で、それが分かりやすいのだろう。個人的には子供のこころの揺らぎに興味はないが…。
それにしても静かな筆致で味わいがあり、露骨な事件性もなく、もちろん狂気も幻想性もない。正統派の日本文学とはこういうものかという気がした。
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