漫画家まどの一哉ブログ
「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」
読書「臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ」
大江健三郎 作
作家ケンサンロウはかつての学友、今は映画プロデューサーの男に、ある国際的な映画のシナリオを依頼された。主役を張るベテラン女優サクラは、かつてケンサンロウが学生時代に見た8ミリフィルム作品、「アナベル・リイ」(ポー詩原案)のなかのアナベル役の少女である。
ケンサンロウの故郷松山に伝わる「メイスケ母」の農民運動を素材に企画は進むが、やがて隠された事実が。かつて少女時代のサクラが主演した8ミリフィルム「アナベル・リイ」には、本人が知らない間に撮られたノーカット版があり、そこで彼女は裸身であった。これは忌まわしきチャイルド・ポルノなのだろうか?
大江健三郎の紡ぎ出すイメージはむかしから、あきらかにわたしの趣味に合っているのだが、あのだらだらした粘着質の文体がどうにも読みにくくて、つかず離れずといった読書体験だった。しかしこの作品は気にならずに読めた。森の中の土地に伝わる「メイスケ母」の怨霊、白い寛衣をつけて死者を演じる少女、そしてタイトルや文中に日夏耿之介のポー訳詩。土俗的で絢爛でエロチックな世界は、やはりあの独特の文体から匂い立つ。それにしても2007年の作品だから、作者老いてますます盛んと言っていいか。
大江健三郎 作
作家ケンサンロウはかつての学友、今は映画プロデューサーの男に、ある国際的な映画のシナリオを依頼された。主役を張るベテラン女優サクラは、かつてケンサンロウが学生時代に見た8ミリフィルム作品、「アナベル・リイ」(ポー詩原案)のなかのアナベル役の少女である。
ケンサンロウの故郷松山に伝わる「メイスケ母」の農民運動を素材に企画は進むが、やがて隠された事実が。かつて少女時代のサクラが主演した8ミリフィルム「アナベル・リイ」には、本人が知らない間に撮られたノーカット版があり、そこで彼女は裸身であった。これは忌まわしきチャイルド・ポルノなのだろうか?
大江健三郎の紡ぎ出すイメージはむかしから、あきらかにわたしの趣味に合っているのだが、あのだらだらした粘着質の文体がどうにも読みにくくて、つかず離れずといった読書体験だった。しかしこの作品は気にならずに読めた。森の中の土地に伝わる「メイスケ母」の怨霊、白い寛衣をつけて死者を演じる少女、そしてタイトルや文中に日夏耿之介のポー訳詩。土俗的で絢爛でエロチックな世界は、やはりあの独特の文体から匂い立つ。それにしても2007年の作品だから、作者老いてますます盛んと言っていいか。
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