漫画家まどの一哉ブログ
「ディフェンス」 ウラジーミル・ナボコフ
「ディフェンス」
ウラジーミル・ナボコフ 作
(河出文庫・若島正 訳)
孤独な少年ルージンはチェスの世界に触れるや頭角を現し、やがて世界的な選手に。だがチェスは同時に彼の穏やかな人生を破壊してゆく。
冴えない少年ルージンが大人を倒してあっという間にチェス界を駆け上がっていくところはワクワクとして楽しいが、もちろん少年漫画ではないから対決自体で盛り上げたりはしない。彼が大人となって世界的な選手となっても普段はパッとしない小太りなウスノロであるのが面白い。
宿敵との対決のあげく精神の安定を失い、妻の計画にも乗せられてチェスの世界を離れ平凡な社会人として生きようとする。この平凡な生活が長く描かれ、いつチェスの世界に戻るのかもどかしい思いだった。ラストに向かって読んで快哉を叫ぶような展開はなく、結局彼は天才であることと生活者であることの釣り合いが取れなかった。
周囲の人間の無理解さ。とくに義母のチェスなんぞを仕事としている人間への蔑みが話を面白くしている。人物はみなわかりやすくイキイキと描かれ、しかもパターン的な人物造形ではない。さすがナボコフ。チェスの指し手自体を追わず、試合そのものもめったに書かずにドラマの楽しみは存分にある。
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