漫画家まどの一哉ブログ
「誠実な詐欺師」 トーベ・ヤンソン
「誠実な詐欺師」
トーベ・ヤンソン 作
(筑摩書房・冨原眞弓 訳)
数字に明るく冷静で合理的な女性カトリ。彼女が性格的に正反対の絵本作家アンナの元で暮らすのはある計画があった。ムーミン以降に書かれた長編コレクション。
口数も少なく感情をあらわにしない、経理に強く世の商売人たちの嘘を見破る。付近の子供たちからは魔女と囃される。かつてこんな性格の女性主人公が小説の世界にいただろうか。怜悧そのもので常人離れしているため、読者の共感を呼ぶこともない。そして芸術的才能もないのだ。
そんな彼女と対称的なのが年長の女性絵本作家アンナである。忠実な自然描写と花柄のウサギを描いて人気だが、金銭には執着がなく、ファンタジーの世界に生きているような人間。カトリは弟と犬と共にアンナの家に住み込むことになるが、これは実は冷酷なストーリーである。トーベ・ヤンソンはムーミンにおいてただのメルヘンを書いていたわけではない。
周りの人間からカモにされていても気づかないアンナ。この絵本作家の経理状態を徹底的に正し、収支を適正な状態にしていくカトリ。アンナはカトリの存在を喜んでいるわけではなく、肌の合わない女にこれまでの自分の生活をどんどん否定されていくことを耐えねばならない。そしてカトリには彼女なりの幸福のための計画があった…。
PR

