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漫画家まどの一哉ブログ

   
「橇/豚群」 黒島伝治
読書
「橇/豚群」黒島伝治 作
(講談社文芸文庫)

プロレタリア文学作家としてその名は知っていたが、読んだのは初めて。物語の最後に農民や兵士が支配階級の存在に疑問を抱いたり、反旗を翻そうとしたりする部分がなるほどプロレタリア文学であるが、そうでなくても実によくできた社会派小説であり傑作短編集だ。ムダに内省や理屈をこね回すところがなく簡潔明瞭、読んで面白く出来ているところが良かった。

舞台は作者の出自を題材にして、小豆島の農家であり、醤油工場の労働者でもある。当時は身分や階層というものが根強く意識されていて、下層民の子供は進学を志しただけで地主や周囲の村人から白い目で見られる。小作の子は小作、醤油蔵の労働者の子は醤油蔵の労働者と決まっていて、滅多なことでは抜け出すことができない。抜け出してはならないといった空気だ。常に周囲の目を気にしながらでないと自分の人生も決められない。これが20世紀初頭の日本の村落だが、その頃からどれくらい進化しているのか?

そしてもう一つの舞台はシベリアに出兵させられた日本兵である。戦後ソ連によってシベリアに抑留された話はいろいろ読んだが、大戦開戦前のロシアへ侵略する様子は知らなかった。侵略戦と言っても、徴用によってロシア農家をいじめたり、パルチザンと小競り合いを繰り広げたり、狼と戦ったりと非常に地味なものだ。
「渦巻ける烏の群れ」というタイトルが私の中では有名だったが、これも無計画に凍土へ攻め入って道に迷い、はかなくも氷漬けになる悲しい戦争の話。

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