漫画家まどの一哉ブログ
「わが悲しき娼婦たちの思い出」 G・ガルシア=マルケス
「わが悲しき娼婦たちの思い出」
G・ガルシア=マルケス 作
(新潮社・木村栄一 訳)
90歳の誕生日に眠ったままの少女と同じベッドで一夜を過ごした男性。繰り返すうちにほんとうの恋愛を知る。
川端康成「眠れる美女」に倣って書かれた作品。川端の匂い立つ様なエロチシズムに比べ、意外にもマルケスの健全な人間性を感じる。この主人公の90歳の男が自身を揶揄するにも関わらず、著述家として一般の多大な支持を得ており、読み進むにつれ心優しい感性豊かな人間であることがわかる。
彼は性欲の趣くままになじみの娼館に通い、数知れぬ娼婦と過ごしてきた性豪でもある。それでもアブノーマルなところはなく、肉体関係抜きで少女を愛するところはまるで初めてピュアな恋に目覚めた少年のようなものだ。川端にあきらかにある耽美がマルケスにはなく、本作はマジックレアリスムもない。「眠れる美女」がヒューマニズムになったようだ。
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