漫画家まどの一哉ブログ
「出版という仕事」 三島邦弘
「出版という仕事」
三島邦弘 著
(ちくまプリマー新書)
出版という仕事の楽しさ、奥深さとそのシステムを丁寧に解説するとともに、出版不況とよばれる現代のほんとうの姿を紹介する。
「おもしろマグマ」という情熱をキーワードに、企画から社内審査、制作、出版から営業までビギナーがワクワクする形で出版の仕事を解説。まさしく誠意ある入門書。ミシマ社主催著者の実体験から、岩波書店や中央公論社の始まりまで具体例豊富。若いみなさんはぜひ出版の世界へ飛び込んでほしい。
返品率40%の現状でありながら、目先の売上を落とさないために大量の新刊を出す。この悪循環を断ち切るためにミシマ社始め取次を介さない、書店との「直接取引」がある。すると単なる消費者ではなくほんとうにその本を愛する読者とのつながりが生まれていく。
ミシマ社が立ち上げた書店と出版社をつなぐ受注プラットフォーム「一冊!取引所」にも100社以上の出版社、1900書店の加入があるが、こうした直接取引は出版業界の売上には計上されていない。また文学フリマの億を越える売上も同じ。加えて書店と言っても取次口座を持っていない書店はカウントされていない。
現在着々と増えつつある古書&新刊書店、雑貨&書店、喫茶&書店などもほとんどカウントされておらず、出版不況としてマスコミで伝えられる数字は大資本の中央集権的な世界なのだ。直接取引系の出版と書店は大いに盛り上がっている。これは読者である私としても実感できる話で、DNPと日販が構想する未来の流通プラットフォームの行方もなんとなく信じられない…。
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