漫画家まどの一哉ブログ
「落葉(おちば)」他12篇 G・ガルシア=マルケス
「落葉(おちば)」他12篇
G・ガルシア=マルケス 作
新潮社
マジックレアリスムの香り溢れる若きマルケスの初期長編「落葉(おちば)」。他12の幻想的短編を収録。
「落葉」:街に流れ着いた漂白の博士。博士を家に受け入れる大佐。大佐の娘とその息子。博士の埋葬までを親子三代にわたって代わる代わるモノローグで語り続ける。彼らの周りの人物も同時に年代を行ったり来たりするので、人物は混交し眩暈を覚える感覚。しかしトータルで見ると一人称でありながら、多くの人間の一生を俯瞰したスケールとなり、ここにマジックレアリスムが完成する。
この長編に付随して「落葉」本編から独立した形で短編「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」が掲載されているが、この作品は他の短編と違ってマジックのない、非常にリリカルな情景描写で描かれた逸品である。意外な落ちつきぶりだ。つまり本編はいかにそわそわと浮き足だった波乱含みの、事件スタイルで書かれているかというもの。
巻末解説にあるマルケスのジャーナリズムの手法というのはこの辺りのことを言うのだろうか?それでいて作品には惑溺されるような文学的魅力があるので、なにか騙されたような後味がある。登場する人間たちが甚だ要領を得ず低きに流れるありさまなので、そこは納得できるところ。人は皆流れ者だ。
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