漫画家まどの一哉ブログ
「二十一世紀前夜祭」 大西巨人
読書
「二十一世紀前夜祭」大西巨人 作
「二十一世紀前夜祭」大西巨人 作
2000年発行の短編小説及びエッセイ集
大西巨人はまるで公文書のような大げさで堅苦しい表現をそのまま使うのが特徴だ。例えば「その『創刊の辞』的な短文について、大津は、どこが悪いのか、どこが連合国軍の占領政策遂行を阻害するのか、どこが日本絶対主義的軍国主義(の復活)を鼓吹するのか、というような諸点を理解も納得もし得なかった。」というような具合である。ところが読んでみると小説を読む楽しさが存分にあって、これが実に愉快なのだが、よく見ると言葉は大げさだけれど、言ってることは少しも難しくない。人間が動いている。確かに小説なのだ。
それで短編小説と言っても「小説家真田修冊の放送談話(録音より採取)」という体裁をとった身辺雑記のようなものだが、「老いてますますさかん」「年寄りの冷や水」など老齢に関する随想が面白かった。
そしてこの放送談話の体裁のまま、太宰論・安吾論をも含んだ加藤典洋の「戦後後論」についての批判が続く。これは98年に「群像」誌上で繰り広げられたもので、論旨についてはどっちでもいいのでなんとも言えないが、小説家は芸術家でありながら評論家と土俵がかぶるので大変だなと思うね。
PR
COMMENT