漫画家まどの一哉ブログ
「黒縄」 井上光晴
読書
「黒縄」 井上光晴 作
1975年作品。刊行当時から知っていたが今になって読む。
伊万里近くの土地で伝統の釜を引き継ぐ陶芸家の主人公。あと二日で自信の作品が焼き上がる頃、街で放火事件が起きる。犯人をめぐって噂が噂を呼び、主人公の家に同居する姉が疑われ、姉は精神を病み、かつて町で起こった不倫事件の記憶も呼び起こされて、ただならない状況になっていく。
常に波乱を含み怪しい雲行きが幾重にも広がる井上光晴の世界。読んでいて不安で暗澹とした気分になるが、事件が次々と展開するので目が離せない。近隣住民の集会が実に嫌なもので、警察発表で街が混乱するのを恐れ、噂話のみを根拠に対策を立てようとするが、はっきりと責任ある発言は誰もせず、うやむやなまま犯人探しが繰り返される。この気味の悪いべったりした無責任な共同体がおそらく日本社会の根っこにあるのだろう。
マスコミで報道されるような大きな事件ではなく、日常生活の中で常にある危機と不安。とにかく何もはっきりしない中でただ不安ばかりが増大してゆき決して解決しない。暗黒というより永遠に曇り空の下を進むような、これが井上光晴を読む醍醐味だ。
「黒縄」 井上光晴 作
1975年作品。刊行当時から知っていたが今になって読む。
伊万里近くの土地で伝統の釜を引き継ぐ陶芸家の主人公。あと二日で自信の作品が焼き上がる頃、街で放火事件が起きる。犯人をめぐって噂が噂を呼び、主人公の家に同居する姉が疑われ、姉は精神を病み、かつて町で起こった不倫事件の記憶も呼び起こされて、ただならない状況になっていく。
常に波乱を含み怪しい雲行きが幾重にも広がる井上光晴の世界。読んでいて不安で暗澹とした気分になるが、事件が次々と展開するので目が離せない。近隣住民の集会が実に嫌なもので、警察発表で街が混乱するのを恐れ、噂話のみを根拠に対策を立てようとするが、はっきりと責任ある発言は誰もせず、うやむやなまま犯人探しが繰り返される。この気味の悪いべったりした無責任な共同体がおそらく日本社会の根っこにあるのだろう。
マスコミで報道されるような大きな事件ではなく、日常生活の中で常にある危機と不安。とにかく何もはっきりしない中でただ不安ばかりが増大してゆき決して解決しない。暗黒というより永遠に曇り空の下を進むような、これが井上光晴を読む醍醐味だ。
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