漫画家まどの一哉ブログ
無題
「オセロー」
シェイクスピア 作
(新潮文庫)
優秀なる武官であるオセロー。部下の捏造による妻の不倫を信じ、妻を殺害するとともに自死に至る。あまりに悲惨な四大悲劇のひとつ。
久しぶりのシェイクスピア。共感性羞恥のためオセローが騙されているのに耐えられず中断していたが頑張って読了した。
かなりドラマティックで、強い夫婦愛が悪巧みによって崩れていく展開はまるで昼ドラ(よく知らないけど)のようだ。悪人はいかにも悪人で通俗的でわかりやすい。またいつも通りセリフも大仰で、嘆きのシーンなどは詩的修飾をともなって滔々と続き、これも古風な舞台劇ならではの楽しさであろう。
人事を恨んだ部下イアーゴーの捏造と雑言を信じ最愛の妻を殺してしまうオセロー。思うにオセローは人事の妙に欠けるところがあり、部下の配剤を間違ってしまう。真実忠誠を誓っているように見えても人間には裏があることに思い至らないのは、まだまだ人間を知らないのか。軍人としては優秀でも政治家ではないのだろう。
オセローを騙すイアーゴーのあの手この手もよく考えるものだ(シェイクスピアが)。ハンカチのトリックなどは今から見るとやはり古典的だがこれが嚆矢かもしれない。ラストは次々と人が刺されたり死んだりして進展激しく、オセローの自殺で終わるがあまりに悲劇的。それもあっという間の出来事。
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