漫画家まどの一哉ブログ
「ジャンプ」 ナディン・ゴーディマ
「ジャンプ」
ナディン・ゴーディマ 作
(岩波文庫・柳沢由美子 訳)
アパルトヘイトが廃止されマンデラ政権が誕生しようとする南アフリカ。大きく動く社会の中で戸惑いながら生き抜く人々を描く短編集。
作者は南アフリカ国内から徹底してアパルトヘイトを批判し続けたノーベル賞女性作家。本格的なリアリズム小説で幻想性や私小説性など余計なものはなく、作者ならではの個性的な表現も直接的には感じられない。正当な社会派小説という印象だ。
南アフリカの歴史や人種構成をよく知らないので、単純に白人対黒人で考えていてもわからない。カラードも単なる混血というものでもない。白人も裕福なブルジョアから貧しい移民までいる。ムスリムやユダヤ人もいる。また黒人の反アパルトヘイト運動のみならず逆に白人の反アパルトヘイト反対運動もあり、作品には爆弾を使って行われるテロリズムも登場する。
アパルトヘイトから抜け出そうとする新しい社会が舞台で、登場人物がどの立場の人間か、説明されているわけではないから私のように無知な日本人にはなかなかわからなかった。しかし作品は全く観念的ではなく、平易で読みやすかった。
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