漫画家まどの一哉ブログ
旧約聖書「創世記」
旧約聖書「創世記」
(岩波文庫・関根正雄 訳)
旧約「モーセの6書」のうち、その巻頭を飾る天地創造とカナン(パレスチナ)を巡る族長の物語。
有名なアダムとイブやカインとアベル、バベルの塔などの逸話はごく簡単にさらりと描いてあるだけ。神(ヤハウェ)に選ばれし者ノアの箱舟のくだりがやや詳しく語られ、同じく神に選ばれしアブラハムが登場し、ソドムの滅亡へとストーリーが膨らんでゆく。いよいよ族長の物語が始まるのだ。
そうなるとイサク、ヤコブ、ヨハネと代を追ってゆくに従って人間臭い、権謀も術数もある物語となる。ヨセフなどはなかなか強かな人間だし、女たちも誰の子を産むか未来への計算もある。また一人エジプトで生き延びたヨハネの涙など、感情に訴える演劇的な演出もあって読み物としておもしろい。
それにしてもやはりキリスト教の神(ヤハウェ)とは恐ろしいものだ。常に人間を見張り時には厳罰を与えるが、それは地域ごと全生物抹殺という容赦のないもの。同じ宗教と言っても仏教の全ての人間を慈愛と安心で包む阿弥陀仏や、老荘の無の思想などとはまるで違う。神への絶対の愛が常に試されている厳しさ。そして神に選ばれていることは無批判に前提となっている。
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