漫画家まどの一哉ブログ
「まちがえる脳」 櫻井芳雄
「まちがえる脳」
櫻井芳雄 著
(岩波新書)
なぜ人は間違えるか? 脳の信号伝達をニューロンと神経回路から解き明かし、AIとはまるで違う脳のシステムに迫る。
ニューロンは他のニューロンからシナプスを介して信号を受け取るが、それには信号を送るほうのニューロンが発火(スパイク)しなければならない。しかしニューロンは自力では発火できないので、そもそも最初の信号はどうやって発生しているのか?この自発性の謎が未だ解決されていないことに驚いた。
ニューロンが送る信号が次のニューロンに伝わる確率は30回に1回程度。そこで多くのニューロンが同期発火して確率を上げている。この同期発火のタイミングはどうやって決まるのか?これも謎のようだ。その他樹状突起も軸索もそれぞれの方法で、脳は総動員して情報を伝えている。たしかにアナログだ。
健康に過ごしていた人の脳が、調べてみると水頭症で脳は25%ほどしかなかった。脳を半分削除した人もしばらくすると健常な活動を取り戻す。脳の部位によって働く内容は固定されているわけではなく大いに融通が効くらしい。また経験した全ての事象を完璧に記憶している(しかも画像として)人の実例など面白かった。
プラセボ効果の実験。自分の受けた治療が偽薬ではなく本物の薬だと信じた人は病状が回復し、実際に脳内でニューロンの発火が変化したりエンドルフィンが生産されたりしているのだから、まさに「病は気から」!
その他、右脳左脳神話や男脳女脳神話など脳に関する迷信も解説し、素人でも楽しく読めた。
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