漫画家まどの一哉ブログ
「恋の罪」 サド
「恋の罪」
サド 作
(岩波文庫・植田祐次 訳)
サドの適法小説4編を収録。性的なシーンはないものの、美徳や善に対する快楽と悪徳の勝利を描いて読者の興奮をそそる。
サド曰く劇的表現技法の主たるものは恐怖と哀れみであり、それは美徳の不幸でなくてなんだ。というわけでひたすら善意溢れる若者男女が悲惨な目に遭う事態が連続するのだが、これはやりきれない。善意というものは素直なもので、方や悪巧みはさんざん練り上げられているのでまるでかなわない。
キリスト教が美徳とする禁欲的な生き方に対して、肉体的快楽を肯定し放埒に生きる悪徳的生き方。そのどちらが最終的に心の平安を得られるのか。サドの宗教に対する疑義が描かれていて、たしかにその点は読み応えがある。
しかし物語の最後で悪人が破滅するにせよ、そこに至るまでに善人が散々な目にあって死んでしまったりするのであり、その悲劇ばかりが延々と書かれているので読んでいて暗澹とした気分だ。これではなんのために読んでいるのか?
個人的にはついていけなかった。読書に挫折したのだ。
PR