漫画家まどの一哉ブログ
「冬物語」 シェイクスピア
「冬物語」
シェイクスピア 作
(岩波文庫・桒山智成 訳)
嫉妬に狂った王により命果てた妻。密かに生き延びた幼子。
運命の変転を描く悲喜劇。
嫉妬という主題はかなり多くの文芸作品で目にする気がするが、このシチリア王の嫉妬はかなり極端な設定だ。だんだん疑いの目が育っていくという経緯を経ず、物語が始まるやいなや妻の浮気を決めつける急な展開。妻が亡くなり赤ん坊が捨てられた後に、アポロの神託により妻の無実が証明される。すると王は手のひらを返したように涙ながらに反省するのである。
このわかりやすい前半の設定があって後半、ボヘミア国で生き延びた娘が王子の愛を受けて祖国へ帰るまでの紆余曲折の物語が展開される。面白いのは途中で時のコーラスというものが入り、月日が流れたことを観客に説明するのである。実は王の血を引く娘でありながらそれが証明されず、魔女あつかいされる悲劇だ。
この作品は「パンドスト」という種本があり、これをシェイクスピアが改変してハッピーエンドにしたもの。大衆娯楽として楽しめるかなり単純なものだが、捨てられた赤ん坊の王女を羊飼いと道化師が広い育てたり、王女の証明にゴロツキ男が一役買っているところが、ちょっとした味付け。ボヘミアに海があっても誰も疑問としない。
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