漫画家まどの一哉ブログ
「鷲か太陽か?」 オクタビオ・パス
「鷲か太陽か?」
オクタビオ・パス 作
(岩波文庫・野谷文昭 訳)
韻律の支配を逃れて解き放たれたシュルレアリスム散文詩と短編。
そもそも詩魂のない自分だが散文詩は好きで、散文詩か音楽的韻律に基づいた古典的な詩が馴染みやすい。ところがシュルレアリスム散文詩となると言葉の意味の齟齬につまづいてしまってなかなか素直には読み進めなかった。もちろんオクタビオ・パスの作風に限ってのことだが…。
自分の中のもうひとつの自分に言及する作品がくりかえし見られる。文庫解説によると本来自分の中にいるはずの他者、自我と他者に分裂する以前の本源的存在を取り戻す意味があるらしい。この他者は客観的な社会的存在としての自分という簡単な意味とは違うのだろうか。あるいは自我確立以前の幼児の頃の自分だろうか。
そんなふうに分析するのも野暮なもので「音節的韻律法の体系に対する反逆」自体はまったくかまわない。作者の繰り出すイメージのつながりをどう楽しむか?二度三度読み返す必要がありそうだ。
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