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漫画家まどの一哉ブログ

   
「塵に訊け」 ジョン・ファンテ

「塵に訊け」
ジョン・ファンテ 作
(未知谷・栗原俊英 訳)

ロサンゼルスの安ホテルでひたすら小説家を目指す主人公。カフェで働くメキシコ移民の女性に惚れ込み、成就せぬ恋に悩みながらしだいに作品を積み上げてゆく。

今まで読んだ未知谷のファンテシリーズは「ロサンゼルスへの道」「犬と負け犬」の2冊だが、この作品も相変わらず饒舌で痛快で破滅的で面白いことこの上ない。情景や内面の描写に多くを割くことはなく、あってもわかりやすく簡単で、行動と会話で話がどんどん進むところは漫画を読んでいるような感覚だ。

主人公アルトゥーロは貧乏暮らしのくせにたまに金が入ると、いきなり富豪になったような感覚で散財してしまう。釣り銭は受け取らないし、2重3重に料金を多く払って気にしていない。この堅実性のかけらもない性格がさらに話を暴走させる。彼がなぜ教養もないメキシコ娘のカミラに惚れ込んでしまうのかはっきりしないが、彼女よりも突然やってきた大きな傷を負った女ヴェラのほうがずっと魅力的だった。

「なぜって神がどうしようもなくいやらしい詐欺師だから、どこまでも浅ましい卑劣漢だから、あの女をあんな目にあわせた張本人だから。天国からおりてこい、おい神よ、おりてこい、ロサンゼルスの町全体が見てる前でお前の顔をハンマーで叩いてやる、ぜったいに許さないぞ、このあわれでみじめないたずら者め。ーーー」ヴェラの運命と神への怒りはやがて作品へと結実する。





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