漫画家まどの一哉ブログ
「血の熱」 ネミロフスキー
読書
「血の熱」イレーヌ・ネミロフスキー 作
「血の熱」イレーヌ・ネミロフスキー 作
家業に精を出す夫を支え、子供達を育て、平凡な夫婦生活の中にも確かに愛があり、それこそ落ち着いたあるべき人生だが、それでも抑えきれない血の熱ともいうべき愛の形がある。母娘二代に渡って明かされる許されない愛。ある夜突然溺死した粉屋の夫の不審死から明らかになっていくそれは、最終的に語り手である独り身の叔父まで巻き込んで、まさに血の熱のなせるわざが赤裸々に語られる。
通俗的に言えば全員参加のダブル不倫小説なのだが、もちろん描かれる人物はキャラクターなどではなく、持て余すほどの情念をどうすることもできない生身の人間達。インテリが登場しないので観念に逃げる方法がない。話の中に出てきたスプーンが立つほどこってりしたスープのようなもの。事件の謎が解き明かされるに従って、禁断の愛が重ねられていく様子がエスカレートして描かれ目が離せなくなる。
それにしても登場する村の農民たちの因循姑息というか、噂話が好きで無責任で利己的な様子は万国共通なのかな。
PR
COMMENT