漫画家まどの一哉ブログ
「蛇口」 シルビナ・オカンポ
「蛇口」
シルビナ・オカンポ 作
(東宣出版)
現代アルゼンチン短編小説。短いことを存分に活かした幻想文学集。
ごく短い小品ばかりで手軽に読めるが、充分な幻想性があって楽しい。前半、とらえどころのない、ややわかりにくい作品もあるが、本も半ばにさしかかると読みやすく次々と読める。
短いから不思議なことがすぐ出てくる。そしてそのまま捨ておかれて解決しない。これが小気味よいというか心地よくて、これも小品の効能というものだろう。もちろん構成が単純というわけではない。
たとえば残雪やルーセルの作品にある夢幻的世界にはまり込んで抜け出せない息苦しさがない。充分息がつける書き方が嬉しい。これはシュールな出来事に対して語り手がどれくらいの距離をとって書いているかによる違いと思うが、これが息がつけすぎると人畜無害のショートショートのようになってしまう。そこはちゃんと読む者の存在を揺らしてくれるのでありがたい。短編であることが最も活かされた作家
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