漫画家まどの一哉ブログ
「百年の孤独」 ガルシア・マルケス
読書
「百年の孤独」 G・ガルシア・マルケス 作
「百年の孤独」 G・ガルシア・マルケス 作
密林を切り開いて街を育てあげた一族の6世代に渡る百年。
予言や錬金術が本気にされ、地球が丸いことも知らなかった人々がしだいに近代化されてゆく。ジプシーが外の世界からもたらす最新の科学は魔法扱いされているが、実際空飛ぶ絨毯もあったりして魔法と科学の違いは判然としない。
やがて村が街に発展して人口流入、内戦に継ぐ内戦、鉄道布設や農園開拓。労働者のデモは銃によって鎮圧され、後年大量虐殺はなかったことにされてしまう。どんなタイミングでどれだけ急速に近代化されるかによって違いはあるが、ベースとしては世界にたくさんあった近代化の物語だ。それでも社会文学ではない。
主人公の一族は、文字を操る人でなくメディアに触れる人でもなく、家畜を飼い金細工を売り戦争をやって時代の流れの中を泳いでいく。家の中では死んだジプシーはじめ代々の人間が幽霊となってうろうろしており、生きているほうも150歳くらいまで死なない。
反乱軍を率いる大佐、魔法研究家、富くじ販売などいろんな男がいるが根無し草のよう。女もいろいろで家の中をまとめて切り盛りするしっかりものの母さんもいるが、世間との交渉を拒絶する王女の末裔もいる。情に厚い娼婦や占い師。天真爛漫な野生児の超絶美少女は空中に昇天してしまう。
セリフがほとんどなく、何々はどうだったとの叙述形式で延々と物語が進んで、べったりと稠密に描かれた世界はそれこそ熱帯の風土を思い起こさせる。暑苦しさと幻想と、まさに濃厚なラテンアメリカの味わい。
代々同じ名前を持つ者が多く登場し、馴れるまではやや混乱する。
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