漫画家まどの一哉ブログ
「犬が星見た」ロシア紀行 武田百合子
読書
「犬が星見た」ロシア紀行
武田百合子 著
「犬が星見た」ロシア紀行
武田百合子 著
武田泰淳・百合子夫妻と友人の竹内好の3人による1969年のロシア旅行。ナホトカからイルクーツク、タシケントを経てレニングラード、モスクワからストックホルム、コペンハーゲンに及ぶ長旅。そしてこれが武田百合子の立場だからかもしれないが純粋なる観光旅行なのだ。
武田百合子はカタコトのロシア語でも平気で話しかけるし、歌も歌うし、どこへでも物怖じせずどんどん行く。裏表がない素直な人で、そんな人が煌めくような文才を持っているというのは、希有と言うか天の配剤というか。
旅行記自体は食事や空港やホテルや博物館のようすなど特別なものではないが、読んでいるとだんだん楽しい気分になってくるのも、著者の純粋な人柄があふれているからだと思う。
この旅行記が刊行されたころには武田泰淳も竹内好も亡くなっている。
「帰国の折りの飛行機は、二人(泰淳と竹内)をのせそのまま宇宙船と化して軌道に乗り、無明の宇宙を永遠に回遊している。ーーー私だけ、いつ、どこで途中下車したのだろう。」あとがきは実に美しくて悲しい名文だ。
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