漫画家まどの一哉ブログ
読書
「新アラビア夜話」 スティーヴンスン 作
かつて「自殺クラブ」というタイトルで講談社文庫から出たものを持っているが、今回新訳で読み返してみた。19世紀のロンドンを舞台にしたアラビアンナイト。
あるときは変装までしてその身分を隠し、市井にまぎれて悪人を退治するその人、実はボヘミヤの王子フロリゼルを中心とした物語である。まるで暴れん坊将軍のような設定だ。「自殺クラブ」と「ラージャのダイヤモンド」の2編で構成されている。
「自殺クラブ」:クリームタルトを配り歩き、断られたら自分で食べて、もう27個も食べている奇妙な青年に案内されて王子フロリゼルと家臣ジェラルディーンがたどりついたのは、自殺志願者の集まり「自殺クラブ」だった。自身も自殺志願者を装ってクラブに参加した王子とジェラルディーン。トランプの引き札によって、その夜の自殺者と幇助者が決定される仕組み。後戻りできない状況に追いやられた二人は、クラブの主催者を退治するべく立ち上がる。
「ラージャのダイヤモンド」:インド由来の極めて大粒の宝石「ラージャのダイヤモンド」。ヴァンデラー将軍の夫人は家中の宝石類をこっそり持ち出そうと使用人に托し、その結果とある庭先で宝石はばらまかれてしまう。その中の「ラージャのダイヤモンド」に目がくらんだ聖職者ロールズは神を裏切って宝石を盗み取るが、さらなる悪人もからんで結局宝石はフロリゼル王子の手に渡るが…。
しっかりと設定されてシリーズ化されていたわけではないのが残念で、王子が活躍するのは「自殺クラブ」のほう。もう少し王子とジェラルディーンのコンビの話を読んでみたかった。古典ながらストーリー中心主義を楽しみたい自分としては、昔のイギリス文学はもってこいだ。