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「存在の耐えられない軽さ」
読書(mixi過去日記より)
「存在の耐えられない軽さ」
ミラン・クンデラ


プラハの春以降、ソビエトに蹂躙されたチェコスロバキア。新聞の投書記事を反共産主義とみなされ、医師の職を追われることになった主人公を中心に、その妻、友人たちとの恋愛と死までを描く。

小説と言う分野はずるいもので、言葉を使うものだから、語り部として有能な作者ならば、自身の思想や想いをそのままの形で書き述べることが出来る。
作中人物に長々と語らせてもよいが、実は彼女の愛はこうだった。彼にとって女とはこういう存在だった。この時代の政治とはどうだった。などなど作者目線で書いてしまうのは自由だ。クンデラはこの辺が自由自在で、哲学や政治思想に関する直接的な著述が、この恋愛小説には多く含まれているが、だまされたように読めてしまう。

もしその思想的な部分が作品のテーマとなっているのならば、単純な駄作であろうが、あくまで人間の存在に正解はなく、登場人物を動かすことによって、一歩ずつ確認していく作業が、芸術の醍醐味であろう。この話は大人の恋愛を描いたものだが、タイトルどおり人間の存在の問題を含んでいるので、自分でも読めた。

ロシアの監視下にあり、秘密警察の罠が渦巻くプラハでの話もスリリングだが、終章、田舎に移り住んでようやく心の平穏を得た二人の幸福の発見、かわいがっていた飼い犬の死、など実に細やかに描かれていて泣きそうになった。

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