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漫画家まどの一哉ブログ

   
「神曲」地獄篇 ダンテ

「神曲」地獄篇
ダンテ 作
(河出文庫・平川祐弘 訳)

著者ダンテ本人が、古代ローマの詩人ウェルギリウスの魂とともに地獄をめぐる体験記。

近代文学以前の、小説という形を取らない大作を読むのは初めてだが、意外にも一大娯楽巨編といった感覚で読めた。1966年の平川祐弘訳がくだけた現代文で古典であることを気取らず、作者ダンテが目指した喜劇のスタンスを敷衍しているらしくそれがよかった。
こればかりは仕方のないことだが、徹底的にキリスト教の立場で書かれていて逆におもしろいくらいだ。マホメットでさえ地獄の底の方で体を切り刻まれて喘いでいるのだから容赦がない。

地獄を底の方へ底の方へと順番に降りていくに従い罪深い連中が手酷い劫罰をくらっていて、そのエスカレーションが楽しみだが、ストーリー的には途中危険な崩れかけた橋や断崖を渡ったり、鬼どもに騙されたり、現世で横暴を働いた連中のうらみつらみを聞いたりと、仕掛けはあれやこれやたっぷりだ。

全編詩篇ということだが、自分の理解している詩というものとかなり違っていて、叙事詩の体裁をとっているせいか改行された散文といったふうである。師匠である詩人ウェルギリウスとダンテとの上下関係がはっきりしていて、師匠はやたらえらそうである。

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