漫画家まどの一哉ブログ
「巣 徳島SFアンソロジー」 なかむらあゆみ 編
「巣 徳島SFアンソロジー」
なかむらあゆみ 編
(あゆみ書房)
徳島を舞台に徳島に縁のある作家が集った短編アンソロジー。S(そっと)F(ふみはずす)がテーマ。
暮らしに身近な日本幻想文学集といったふうで、SFに疎い私にとっては馴染みやすかった。どの作品もちょっと不思議なことが起こるが、慌てるでもなく日常は継続していて、この生活のリアリティがあるからこそ楽しめる仕掛けだ。
そうは言ってもなるべくならやはり文章自体に味わいがあって、行を追うだけで脳に快感をもたらしてくれるものが良い。個人的な趣味の問題もあろうが、はやりの現代文学でも表現自体はただ書いただけの感触のものも多く、この辺は贅沢な悩みか。
小山田浩子「なかみ」:セリフも地の文も区別することなく改行もなく一気に書かれているが、リズムがいいのかグルーブがあり、名演奏を聴いたような楽しさだ。
久保訓子「川面」:ここに登場するダンナというものが小動物のような不思議な生物で、バッグに入れられて移動しているのだが、ふだんは会社勤めで出張もするという謎の存在である。妻である私のちょっとしたスリリングな冒険もあるのだが、文章自体は落ち着いていて安心感があった。
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