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「ひっくり返す人類学」 奥野克己

「ひっくり返す人類学」
奥野克己 著
(ちくまプリマー新書)

狩猟採集民の暮らしをフィールドワークによって明らかにする人類学。我々が当たり前としている現代社会や生き方を「そもそも」から見つめ直す。

個人的にはやや苦手だった人類学。この著作で学校や教育、貧富の差や権力が存在しない社会を知って確かに驚いた。カナダ北部のヘヤー・インディアンやボルネオ島のプナンなど狩猟採集民の暮らしが具体例だが、素人考えではやはり農耕以前の少人数共同体であればこその生き方だと思う。
年々生産力が向上して蓄積が増えるわけでもなく、その村に生まれれば一生同じことをして代々暮らしていくのであれば、わざわざ学校などで教えなくても大人のやることを見て自然に覚えることばかりだ。規律や訓練など上下関係や権力が発生する必要がない。

誰かが獲った獲物はすべてみんなのもので必ず全員に分け与えられるというシェア法則は、狩猟採集社会を維持していくために厳しくルールづけられているのも興味深い。個人的な独占欲はやはり人間の自然な衝動で、子供の頃から独り占めを禁止されることによりシェア法則が内在化され維持されていく。権力を生じさせないための仕組みが徹底されている。

またこれら狩猟採集社会には我々の現代社会にあるうつ病に代表されるような心の病はないのだが、驚いた時に汚言や卑猥語をしゃべってしまう病理があってなんとも不思議だ。これは未解決だ。
また「あの世」などの概念がなく、人が死ぬと肉親が自分の名前を変えて死者を忘れようとする文化は、農耕社会と狩猟採集社会の違いかとも思う。
動物に人間と同じ精神性を認めるのは、私個人的にはあたりまえの感覚で、西欧社会がおかしいと感じている(笑)。

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