漫画家まどの一哉ブログ
「南海千一夜物語」 スティーヴンスン
読書
「南海千一夜物語」スティーヴンスン 作
(岩波文庫)
南太平洋サモアに移住した英国作家スティーヴンソンが、当地で書き残した異色海洋冒険小説3編。
「ファレサァの濱」:悪党退治の冒険譚だが悪党の惨殺に容赦がない。
「瓶の妖鬼」:これは怪奇短編集にも収録されている名品。
「声のする島」:これも幻想小説。魔法っぷりがすごい。
この文庫本の初版は1950年ながら、中村徳三郎の訳はまったく古くなっていない。
スティーヴンスンは私の大好きな作家で、ロンドンが舞台の「自殺クラブ」「ジキル博士とハイド氏」や南海が舞台の「宝島」「引き潮」など。どれをとっても面白い。文庫解説文中のゴールズワージーの論評(1928年)が的を射ているので引用する。「スティヴンソンは人間の型を描いたり人間の生活の種々なる面を描き出すというよりは寧ろ物語作家であって、アレグザンダ・デューマーやディッケンズに較べてみて遜色がないのみか、筋の運びの手際の良さと快適な速さをもつ点では却って両者を凌駕するものである。19世紀の英国の作家の中で不朽の生命をもつであろうと想われるのは、ディッケンズを除けばひとりスティヴンソンあるのみである。」
ディッケンズも数作読んだくらいだが、まさに私が感じていた印象そのままだ。この上質の物語文学というものがある種の理想であります。
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