漫画家まどの一哉ブログ
「カスパー・ハウザー」あるいは怠惰な心 ヴァッサーマン
「カスパー・ハウザー」あるいは怠惰な心
ヴァッサーマン 作
(岩波文庫・酒寄進一 訳)
ニュルンベルグに現れた謎の少年。長年幽閉されていたせいで言葉も喋れず、パンと水のみを食す。無垢の天使かペテン師か?1830年代の実話をもとに書かれたドイツ文学。
まったく人間社会を経験していない少年が少しずつ成長していく様は、ピュアであったり嘘つきであったり、こんなものかなとは思う。しかし同情や魅力は感じない。彼には煮え切らないイライラする面があって、彼を養育する保護者たちも、読者のわたしたちもなんともスッキリしない印象だ。
また彼を取り巻く大人たちは善意の保護者・教育者よりも、彼を詐欺師・悪ガキ扱いする人間の方が多く、なんとか化けの皮を剥いでやろうと躍起となる。したがって登場人物はパッとしない主人公と嫌な奴ばかりで不愉快な読書感。地位の高い立派な大人も出てくるがそう簡単に少年を救い出すすべはないようだ。
彼を襲った謎の殺人未遂事件や、彼を皇族の世継ぎであると明かして利用しようとする伯爵の登場などによって、サスペンス的な面白さが出てくるとぐっと楽しくなる。表現もなかなか凝っていて、作者ヴァッサーマンは有名な作家ではないが実話小説・伝記文学などに才があったようだ。しかしいささか長すぎる。
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