漫画家まどの一哉ブログ
「英語と日本語、どうちがう?」 鴻巣友季子
「英語と日本語、どうちがう?」
鴻巣友季子 著
(NHK出版・学びのきほん)
翻訳大国日本だがまだまだ理解されない翻訳の役割と本質。英訳家の立場から英語と日本語のそもそもの構造的違いを明らかにする。
英語はさっぱりわからない自分が海外文学を楽しめるのも翻訳家のおかげ。常日頃から翻訳家の方々の仕事には敬服するばかりだ。著者は文芸作品翻訳の上の苦労や留意点を紹介しながら、英語と日本語のそもそもの違いを繙いてゆく。
日本語では英語で必ず登場するyouなどの機能語としての人称代名詞を使わなくても、文脈自体に意味や意図が満載されている。「今日、車?」だけで通じる。
また主語優勢な英語に対して主題優勢な日本語。「わたしはアイスクリーム」「あなたは、ショパンよね」などなど。「~は」 といっても違う。英語は律儀だ。
日本文学にはもともとなかった三人称全知視点。人物の行動から心理まで語り手はお見通しだ。「私ーあなた」の関係性をベースにした日本語ではこの神の視点が苦手だったようで、心理描写を含まない客観視点が精一杯だ。それでも「~らしく」「~のような」などの主観が混じってくる。
自分がもっとも奇妙に感じる時制の問題。話者が過去のことを語るが、そこで語られる人物は未来に思いをはせていると…、「彼女は6時には支度ができていただろう」「なんて素敵な彼だっただろう」などの不思議な訳文ができてしまう。
PR

