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「ポトゥダニ川」プラトーノフ短編集

「ポトゥダニ川」プラトーノフ短編集
アンドレイ・プラトーノフ
(群像社・正村和子・三浦みどり 訳)

貧困の中でも悪意なくただ正直に生きることしかできない。そんな人々のあまりに極端な人生…。

「ポトゥダニ川」:戦争から帰ったばかりの青年ニキータ。貧困のなかで医師を目指すリューバと愛し合い結ばれるが、あまりにピュアな男で、彼女の幸せばかりを考えている。自信と覚悟というものがないのか、ある日彼女が寝ながら涙しているところを見て、絶望のあまり家出してホームレス生活に入ってしまう。若いとはいえ、ガラス細工のような男だ。しかし真面目で無垢で嘘がないので、いい夫だと思う。貴重な人材だ。

「セミョーン」:彼は子供ながら長男で、彼のあとにどんどん弟・妹が生まれるものだから、毎年お産する母親を手伝って幼い兄妹隊の世話や家事を一手に引き受けている。いわゆるヤングケアラーかもしれない。父親は仕事ばかりだが、そもそもこの父親が子供を作りすぎるのではないか?昔はそんなもんか…?

「たくさんの面白いことについての話」:主人公は頭の切れる開明的な男で、新しい科学的知見をもとに貧しい村を大改革してゆく。しかしこれはリアリズム小説ではなく、全体的に大味な構造で、ある種の寓意小説のようなものである。電気の正体を求めて宇宙へ飛び立ったりSF的な展開もあるのはソビエト揺籃期ゆえの作品か。しかし世界全体と人生とはなにかを一気に把握しようとするプラトーノフのスケールを知ることができる。

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