漫画家まどの一哉ブログ
「ペレアスとメリザンド」 メーテルランク
「ペレアスとメリザンド」
メーテルランク 作
(岩波文庫・杉本秀太郎 訳)
王子ゴローが森で出会った不思議な女性メリザンド。妻となった彼女は城内でゴローの弟ペレアスと心を寄せ合うようになるが…。「青い鳥」のメーテルランクの戯曲作品。
読み始めると夢の中にいるような妙な味わいがあって、引き込まれてしまった。森の中の川のそばで泣いていたメリザンドという女性が、どこから来た何者なのか?肝心な謎が最後までいっこう解明されない。
また彼女は城内の泉に軽率に指輪を落としてしまうし、そのいきさつについても嘘をつく。ヒロインとしては欠陥のある人間だが、あくまで美しく魅力的な女性として描かれる。
ゴローとは歳の離れた弟ペレアスとメリザンドは、まだまだ子供扱いされているが密かに逢瀬を重ねている。はっきり言って赦されない恋なのだがメリザンドがふわふわした実体感のない人間なので、リアルな悲劇感がまるでない。これは作者メーテルランクがそもそもリアリズムとはかけ離れた童話的な作風を得意とするからなのか。文庫解説ではメリザンドは水の精だということだが、作中ではなにも解説されない。
当然のごとく悲惨な結末となるが、ヒロインが人間離れしているので、おとぎ話を聞かされたような味わいだった。よく知らなかったがメーテルランク(メーテルリンク)はユイスマンスやリラダン繋がる象徴主義作家らしいので、自分の守備範囲といえるかもしれない。
PR