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漫画家まどの一哉ブログ

   
室生犀星を読む
読書(mixi過去日記より)
室生犀星を読む

室生犀星の小説を怪奇幻想譚に限って読むと、なんと言っても「蜜のあはれ」という、金魚の化身が、金魚になったり、少女になったりしておっさんとふらふら過ごすハナシが一番だ。
今回それ以外のものを、ちくま文庫のアンソロジーで読んだ。

「蛾」時代劇。四十九日の法用も済ませたその日に、死んだと思った亭主がひょっこり帰ってくる。しかし毎日ぼんやりと過ごすだけで、行方不明になっていた間の様子は語らない。女房は亭主が持ち帰った川魚取りの仕事道具の中から、あるはずもない女物の櫛を発見する。するとその夜から、どこかの町家の内儀が落とし物を捜して訪ねてくるようになった。やがて内儀と亭主は親しげに話し始めるが、ある日ふいに二人とも姿を消す。例の櫛もない。川に行ってみると、何やら水中に二人の影が見えるような、見えないような感じである。

このように、何の説明も解決もせずに、謎のまま放ったらかすタイプのハナシが、個人的には大好きです。

「三階の家」一階は商店だが、二・三階は貸間という住宅。といっても気味の悪い噂が立って、借りているのは三階片隅の男のみ。ある日そこへ、来るなと言っておいた別れた女房が訪ねてくる。男は迷惑がって、きつく言って追い返した。すると夜になって、いるはずもない二階の部屋から物音が…。気味悪がって、商家のおかみと二人で調べても誰もいない。ただ玄関先には訪ねてきた女の履物があり、女は帰っていないのだった。そしてふと階段の裏を覗くと…。

「香炉を盗む」亭主が他所の女の元へ出かけようとすると、必ず玄関で亭主の帽子を用意して待っている女房。亭主に一言も文句を言うではないが、だんだんと気鬱になって痩せ細るうちに、座したまま亭主の行動をすべて感知するようになる。亭主は恐ろしいのだが、病人を放っておくわけにもいかない。女房は死を目前に、ますますその霊感を発揮する。

その他、室生犀星は幻想ものでも、死別した子供の幽霊の話しなど、哀感漂うものが人気なようだが、自分の趣味とはちょっと違った。でもおもしろいです。

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