漫画家まどの一哉ブログ
「とんこつQ&A」 今村夏子
「とんこつQ&A」
今村夏子 作
(講談社文庫)
父親と小学生の息子が営む中華屋に勤める私。最初「いらっしゃいませ」も言えなかったが、何種類ものカードを読み上げることで対応。やっと馴れた頃、輪をかけて鈍い女が雇われた。他短編。
異色作「むらさきのスカートの女」を読んで、なんと奇妙な小説かと驚いたが、これは同じ傾向の問題作。ポケットから溢れるほどの客対応カードを用意している主人公と、命令されなければ何もしないで壁にもたれている新人。コントのようだが表現は文芸だ。
非日常というほどではないが、なにかしら不穏でナンセンスな出来事が膨らんでゆき日常感が揺らいでいる。しかしほのぼのとしていてユーモラスなのである。この特殊な作風で貫き通して欲しいが、他の短編は暗いリアリズムで「良夫婦」などはなんと卑怯な人たちかと読んで気持ちもどんより。
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