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漫画家まどの一哉ブログ

   
「白鯨」
読書(mixi過去日記より)
「白鯨」
メルヴィル作

以前途中まで読んでほったらかしていたメルヴィルの「白鯨(MOBY-DICK)」読了した。
この小説、さぞや波瀾万丈の海洋冒険譚と思いきや、なんと話の半分は捕鯨業に関する蘊蓄で、しかも実際白鯨にめぐりあって格闘するのは、物語もようやく終わる第百三十三章から百三十五章だけというあんまりな構成。しかし物語部分は娯楽性たっぷり、キャラクターの書き分けもサービス満点だよ。なにより魅力的なのはその散文詩的文体であって、例えば…

●結ぼれ、捩れ、皺寄って節くれ立って、憔悴した峻酷不屈の面魂(つらだましい)、眼は廃墟の灰燼のなかになおも赤く燃える炭火のように爛々と、剛毅不撓のエイハブは澄みわたった朝の大気のなかに立ち、ひび割れた兜のような額を、空の麗しい乙女の前額に向けてかざしている。

●「跳ね出た!あそこに跳ね出た!」あたかもその測るべからざる威嚇の行為で、われとわが身を鮭のように天へ投げ上げたときの叫びだ。まことに忽然として紺碧の海原に出現し、さらに紺碧な空の輪郭に縁どられて浮彫になったため、彼の衝き揚げた水沫(みずしぶき)は、しばし氷河のように眩しさに堪えられぬほど燦々(きらきら)と光り、やがてその最初の眩い強烈さから次第次第に色を薄れさせつつ立ち迷って、谷底を渡る驟雨に似た濛々たる霧に変じていった。

クーッ、カッコイイ!僕なんか、最近流行りの小説にチャレンジしても、文体に鑑賞するところがなくてウンザリして数ページで止めてしまうことが多いが、その点こういう文章は味わいたっぷりですね。とはいっても訳文ですけどね。

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