漫画家まどの一哉ブログ
「街と犬たち」 バルガス・ジョサ
「街と犬たち」
バルガス・ジョサ 作
(光文社古典新訳文庫・寺尾隆吉 訳)
1950年代ペルー。全寮制の軍人学校に暮らす10代の少年たち。厳格な規律の裏側で繰り広げられるいじめや放蕩。そして軍事訓練中に起きる悲劇。ジョサ渾身のデビュー長編。
全寮制の軍人学校と聞いただけで、およそ自由のない窮屈な日々が想像できよう。主に語り手である文才ある白人少年というのが作者の分身であろうと思って読んだ。〈奴隷〉と呼ばれるおとなしいいじめられ役の少年やプロボクサー級の能力を持つ悪魔的少年。その他およそ10名の地下グループでの飲酒・喫煙・淫蕩・暴力などなど。入学前からの女子との交際。そして軍人である教官たちの人生も。
2部構成のうち第1部の終わりで事件(生徒の死)が起き、物語はいよいよミステーリーの如くにスリリングな展開となるが、それでも再三に渡って過去のエピソードなどが顔を出す。ここが一気にストーリー本意な流れを作らないジョサの真骨頂かもしれないが、許されるぎりぎりの長さだと感じた。平易な娯楽性があるとはいえ文庫本で630ページほどあり、我儘を言えばこの3分の2くらいの長さにしてほしかった。
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