漫画家まどの一哉ブログ
「ノア・ノア」タヒチ紀行 ポール・ゴーガン
「ノア・ノア」タヒチ紀行
ポール・ゴーガン 著
(岩波文庫・前川堅市 訳)
文明に毒されていない理想の自然な社会を求めて、初めてたどりついたタヒチでの生活。果たしてゴーガンは救われたのか?
解説を見てもゴーガンという人は、もともと株式仲買人におさまるような人間ではなく、かなりアクティヴな熱意溢れる冒険家で、もとよりゴッホとはうまくいくわけがないアクの強い人間だ。
タヒチもフランスが入植している時点でほんとうの非文明社会であるはずもなく、ゴーガンはかろうじてその残り火に触れたようなものだったのかもしれない。
読んでみると彼はかなりの文章家で、記述に格調があり楽しさもある。作家半分研究者半分といった具合で、民俗学的な視点で現地の宗教や慣習をレポート。自然豊かな島と言っても収穫量には限界があり、それゆえの供物としての人減らしなど、宗教行為の由縁を聞くと南海の楽園と言っても実は厳しいものだ。この最初の滞在は2年余り。野蛮になり賢くなったと自認するゴーガンだが果たして…。
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