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「誰のために法は生まれた」 木庭顕
読書
「誰のために法は生まれた」
木庭顕 著


近年よく見かけるようになった、中高生たちと質疑応答をくりかえして専門分野のテーマを解き明かして行く企画。「近松物語」「自転車泥棒」など映画名作、ローマ喜劇・ギリシャ悲劇の脚本、そして現代日本の判例を素材に先生(著者)が投げかける質問に生徒たちが答えながら各章が進む。けっして子ども向けではないし、子どもでも理解出来るかたちで大人の認識をより深く新たにして行く好著。

例えば映画「自転車泥棒」を見て泥棒はなぜ悪いことかを考えるときに、それを倫理の問題として突き詰めるのではなく、あくまで個人の権利(占有)が集団や組織によって脅かされるという現実に沿って考えていく。これがこの授業で法を理解して行く方法である。
この占有というのがキー概念で、単に自分のものとしている以上に物との関わり方の質が重要視されていて、日常生きる上で正当に親和的に大切にされて個人に馴染んでいる、そういった関わり方をしているほうを大切にしていない(例えば暴力的に扱っている)ほうより優位とみなす考え方だ。これがデモクラシーの基本となるべき考え方で、占有している個人はしばしば国家や利害関係のある組織・集団によって脅かされる危険にある。だからこの占有を守って行くために、集団から個人を守るために法は考えられなければならない。

このように抽象的ではなく古く紀元前のギリシャ時代から人間社会が経験してきたことを思考の中心に置くのが法について学ぶことである。なかなかこの占有ということを思い知るのには時間がかかる。一冊読んだだけでは茫漠としたままだった。

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