漫画家まどの一哉ブログ
「海の民」の日本神話ー古代ヤポネシア表通りをゆく 三浦佑之
「海の民」の日本神話ー古代ヤポネシア表通りをゆく
三浦佑之 著
(新潮選書)
ヤマト朝廷成立以前に発展した日本海沿岸地域、出雲・敦賀・能登などなど。新羅や高句麗・渤海など海外との交流も含めてこの沿岸一帯をヤポネシアと名付け、古代日本の表玄関であることを実証する。
「古事記」「日本書紀」などを繙き、スサノヲ、オオクニヌシなど有名どころ以外にもその子孫・縁者が次々と登場。カムムスヒ、スクナヒコナ、ヒコイマス、新羅からきたアメノヒボコなど重要人物の足跡を追う。しかしこの人物群に最後までついていくのはたいへんなので、そこはざっくりと読んだ。
古代ヤポネシア表通りを西から順番に解剖。先ず出雲・伯耆・因幡の史跡や文献を追跡。なかでもヤマト王権と張り合っていた出雲がやはり巨大な文化圏であり、ネットワークの中心であったようだ。宍道湖のような潟湖(ラグーン)が沿岸各地にあり、そこを拠点として海運が発達する。
続く但馬・丹後・丹波。突き出した丹後半島も明らかに通商の拠点。そして若狭・敦賀。敦賀の果たした役割の大きさ。越前・越中・能登に至ってヤポネシアも終了する。
この間各地の神社や遺跡に残された役割と記紀に登場する人物群の業績が大きなドラマを形作り、納得の面白さ。
これらヤポネシアネットワークはヤマト朝廷とは違って、中央集権を目指さない。各地域が自由に動いている。しかしどのみちヤマトの支配下に入ってネットワークは分断されてしまい、中央から地方へと支配される構造が出来上がる。まことに残念だが、我々は一度地図を逆さに見て、往時の東アジア文化圏に想いを馳せてみよう。
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