漫画家まどの一哉ブログ
「日本スゴイ」の時代 カジュアル化するナショナリズム 早川タダノリ
「日本スゴイ」の時代
カジュアル化するナショナリズム
早川タダノリ 著
(朝日新書)
2000~2020年代にテレビや書籍に溢れ「クールジャパン」など文化戦略にも及んだ「日本スゴイ」。日本人をなんとなくイイキモチにさせる、このソフトなコンテンツはなんだったのか?その正体とは。
リアルな海外情報は一顧だにせず、ひたすら自分で自分を褒めまくる当時の「日本スゴイ」番組にはウンザリしたものだが、たしかにこれもいよいよ落ちぶれ出した日本社会の精神病理的な現れ。外国人が驚くシャワートイレを日本人の誇りとする、戦前からの全体主義的な伝統がある。
「クールジャパン」戦略で無理やり理屈づけられる日本人の自然観などは、いかにも広告代理店レベルのいいかげんさ。
ところが2018年から導入された道徳教科書の内容はそれどころではなく、昭和天皇賛美や英雄史観の日本史など警戒していた自由主義史観の復古的道徳が完璧に再現されているではないか。これには驚いた。
家族を中心とし、すべては自助をモットーとした、国に頼らないことを美徳とする理念。なるほど選択的夫婦別姓に反対するわけだ。
そもそも日本が過去に美しい立派な国でなければ、個人が堂々と生きていけないというメンタルはなんなのか。国家と自分の区別がついていない人たちの暗躍はカジュアルな「日本スゴイ」にも及んでいた。というわけだ。
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