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「社会は「私」をどうかたちづくるのか」 牧野智和

「社会は「私」をどうかたちづくるのか」
牧野智和 著
(ちくまプリマー新書)

「私」は社会から作られていた。現代社会学の成果と最新の地平を若い読者に向けて丁寧に解説。

自我とは社会とのコミュニケーションを通じて発達する社会的現象である。まずミード、ゴフマン、エリクソンの学説を紹介。エリクソンの自我アイデンティティ論を解説しながら、現代日本60年代の政治の時代、その後のモラトリアムの時代へ「私」の推移を省みる。

自己像が社会的な倫理・道徳よりも内心を基準とするものに変わってくる。感情労働などの社会的立場に支配されない「ほんとうの自分」が求められ、「私」はしだいに心理主義化してくる。ポストモダン以降、さまざまな社会との関係が個人にとって飽和的状態になり、「ほんとうの自分」も多元的な傾向を持つ。

かつて伝統的共同体に埋め込まれていた自己は、近代後期に至って共同体の崩壊と共に自身で再編していくことになった。人生はすべて自己責任で設計するもので、労働運動の衰退もあって、生きづらさの原因が社会のせいではなく全て自分の失敗のせいにされていく。この最近の傾向と理由に初めて納得がいった。

フーコーが果たした役割が大きく、個々人の認識にに先立って存在する時代時代の「知の枠組み(エピステーメー)」を解説。
具体例として筆者による「少年犯罪の語られ方」を紹介。60年代まであった「社会の歪みや差別」といった語りが、「学校や家庭でのストレス」になり、90年代後半から「心の闇」に変わっていく。この磁場のようなものを見ていく。

社会学は狭い範囲で自分と社会の関係を見ればごく当たり前のことを言っているように思うが、何がその時代の人々の意識を誘導してきたのか。それは労働運動であったり心理療法であったり、新自由主義であったりなど、あらためて発見がある。フーコーについては多くのページを割いていて、たいへんわかりやすかった。

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