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「淫女と豪傑」武田泰淳
読書
「淫女と豪傑」 武田泰淳 作

少ない読書体験で申し訳ないが、武田泰淳はなにを読んでも面白いな。ここに集められた中国を題材にした短編は、近代的な人権思想に目覚める以前の、残忍で欲望に忠実な、動物的な生命力にあふれた人間達が登場して痛快なおもしろさに満ちている。淫女と言うより烈女であって、あっさりと人を殺してしまうから、いきおい作品も物語的になる。


そうは言ってもいちばん良かったのは「盧州風景」という作品だった。やがて儚く死んでいく一看護婦の大陸での暮らしが、盧州の風景描写とともに綴られるのだが、その描写がなんとも寂しく美しい。遥か故郷を遠く離れて生きていく医師と看護士。べつに野心があってそうしているわけでもなく、これが与えられた運命なのだが、まさに人生は漂白だなあと思わされる。大陸にいると大きな歴史の流れに漂う人間の運命が、よりまざまざと感じられるのかもしれない。主人公は淫女でも烈女でもないが、楊(ヤン)さんという同僚の看護士が対照的にたくましい女性で、この人にとっては盧州も地元だからだろうか。


巻末に「淫女と豪傑」という短い評論があって、同じ事件でも豪傑の側から書いたのが「水滸伝」、淫女の側から書いたのが「金瓶梅」ということらしい。やはり「金瓶梅」のほうがおもしろそうだ。

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