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「地図と領土」 ミシェル・ウエルベック
読書
「地図と領土」 ミシェル・ウエルベック 作


ウエルベックは以前「素粒子」を読んだときに、そのセックス描写の多さに辟易した記憶しか無いが、当時の読書日記を読み返してみると、登場人物の虚無的な人生に感動している。

この「地図と領土」ではそんな性的な描写はごくわずかだが、なぜか好きにはなれない。主人公は写真や具象画を手掛ける内向的な芸術家青年で、しだいに名声を得て金持ちとなり、老後は森に囲まれた広大な土地で隠遁生活を送りやがて死ぬまでの時間が、未来から振り返ったかたちで描かれている。彼がギャラリーやプレスの仕掛けによってだんだんと話題の人になっていく様子は、大きな金が動く芸術界の仕組みがよく分かる内容だがつまらなかった。どうもセレブには関心がもてない。

主人公青年は平凡な意味では常識も社会性もあっていまひとつ魅力を感じなかったが、くらべて面白かったのは本人役で登場する作者ウエルベック自身だ。
実際はそんなことはないそうだが、作中ではアイルランドの郊外に一人で暮らし、まったく自堕落で部屋は散らかりっぱなし。創作活動もせず情緒は常に不安定。この人物像こそ芸術家らしくて主人公より魅力的に描けている。しかもついには殺されてしまうという意外な展開で、定年前の憂いを含んだ刑事も登場して後半3分の1はミステリーのようである。

建築事務所の経営者だった主人公の父親が、隠遁して死を待ち望む虚無的な人間で、この父親と情緒不安定なウエルベック本人が不穏な空気を醸し出していてよかった。

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