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「動物農場」 ジョージ・オーウェル

「動物農場」
ジョージ・オーウェル 作
(ハヤカワepi文庫・山形浩生 訳)

自らの奴隷状態を翻し農場主の地位を人間から奪い取った動物たち。だが楽園となるはずの農場は、しだいにリーダーであるブタの支配する独裁国へと変質してゆく。風刺文学の名作。

ふだんから寓意小説や風刺文学というものをあまり読もうとしなかった。笑うための単純な構造が見えたらつまらないし、動物を使うと児童文学の感触なのではと疑ってしまう。
ところがこの有名な作品を読み出してみると、動物たちがあまりに人間的にリアルで話の内容も痛々しく、まさに人間社会そのものの縮図で読むのも辛かった。

そもそもこの作品は社会主義革命後、その理想を離れて独裁化していくスターリン政権下のソビエトを忠実に風刺したもの。確かにそうなのだろうが、遥か時代を経た今となってみれば、この作品はソビエト批判に限定されるものではなく、一応現在民主主義国とされる体制でも同様の事態は容易に起こり得るし、今まさに起きているのではないだろうか。

それほど権力の腐敗・独裁化は共通の過程を経るものであって、この動物農場の如く住民が主体性を持たず、政治について考えることも発言することも放棄してお任せ状態にあると、容易に同じことが起きる。それが読んで身に染みる。

併載の「動物農場序文案」ではロシアがイギリスと同盟を組んで対ナチス戦線に参加したとたんに、スターリン政権批判を全くしなくなったマスコミへの作者オーウェルの憤りが読める。

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