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漫画家まどの一哉ブログ

   
「六号病棟・退屈な話」
読書
「六号病棟・退屈な話」
チェーホフ


チェーホフの小説にはいろんなタイプの人間が出てきて、それが実にリアルに描かれている。その念入りな描写に読み進めるごとに納得してしまう。登場人物にはそれぞれ人間として欠点があり、それがその人の人生を狂わせ破滅へと導いていくのだが、どれもさもありなんといった話で、しかもけっして他人事とは思えない。自分は破滅小説が大好きだが、日本の私小説の面白さとは違う観察された人間観が魅力。医者としての眼で描かれた短編集。

「黒衣の僧」:なんど読んでも面白い、幻想文学の最高傑作。主人公は博士の道を歩む秀才青年だが、疲れた神経を癒すため故郷の果樹園へと戻る。凡庸な人々の中で暮らし平凡な娘と結婚し、心は癒されたが天才の輝きを失いつつあるとき、黒衣の僧の幻影が現れて彼を病的だが非凡な人生へと連れ出すのだった。やがて破滅へ至る主人公、非凡であることと才能とは別だ。

「六号病棟」:主人公の医師は地方の病院へ赴任してきたが、そこは全く荒れた病院で、不衛生で機材不足なうえ職員はヤル気がなく経営は乱脈の限りである。こんな腐敗した状況に対して闘うには主人公はあまりに小心で勇気がなかった。ただ黙々と機械的に業務を続け、やがて時間の大半を自室に閉じこもっての読書に費やすようになる。周囲には自分を理解する教養のある人物はひとりもいない。そんな中、精神病棟である六号病棟に収容されているあるインテリの若者と知り合い、足繁く通っては話し込むようになるが、それは周りの人々に彼の発狂を誤解させるもとであった。状況に目をつぶり、病棟での日常的虐待すらも気付かなかった彼は、報いともいえる悲劇的末路へ向かう。

「退屈な話」:名声は得たが、既に年老いて衰えていく自分をはかなむ老教授。物語前半はまったく老人のグチのようなもので、ぼやきを聞かされる。しかしやがて大切にしていた家族が意に反してゆっくりと崩壊して行き、身近な人々は自分を離れ、老教授は人生の敗北を悟るのだった。これが人生だ。

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