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漫画家まどの一哉ブログ

   
「もののたわむれ」
読書
「もののたわむれ」
松浦寿輝
 作

全十四話からなる短編集。怪異譚が主かと思ったがそうでもなく、都会に暮らす孤独な人々のふとした非日常が淡々と語られる。わりと長いセンテンスを接続詞で手際よく繋いでいく、近代文学の香り豊かな文体が自分好みだった。すらすらと気持ちよく追ってゆける。
勤め人としての盛りを越えた男たちが、ふと立ち寄る場末の珈琲店や、天麩羅屋、将棋倶楽部などでちょっとした不思議に出会い、その短い時間にそれまでの自分の生きてきた時間をあらためて発見するといった具合か。しみじみとした怪異。
ただ読みやすくて気持ちがいい反面、常識から逸脱するような暴れる精神性はまったくなく、自分の印象は、「ああフツーだなあ、壊れない人生をおくる人だなあ。」というものであった。それもまたよし。

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