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「19世紀イタリア怪奇幻想短篇集」

「19世紀イタリア怪奇幻想短篇集」
(光文社古典新訳文庫・橋本勝雄 編・訳)

あまり盛んでなかった19世紀のイタリア幻想文学。知られなかった作品に光を当て、その魅力を探り出す。

全9作品中、アッリーゴ・ボイト「黒のビショップ」だけはどこかのアンソロジーで読んだ記憶があるが、他は珍しい感触を得た。どこのどの時代でもそうだが、典型的な怪奇幻想とは外れたものが面白い。

「黒のビショップ」アッリーゴ・ボイト:どう教育しても所詮知能が低く、乱暴者で動物に等しいとされていた黒人たち。その中で珍しく優秀さを認められ重用されたトム。とあるホテルロビーで、チェスのチャンピオンであるアメリカ白人アンダーセンとチェスの死闘をくりひろげることになるが悲劇的な結果が待っていた。怪奇ではないが捨てがたい名作。

「クリスマスの夜」カミッロ・ボイト:ジョルジュは亡くした恋人エミリアの面影が残るお針子の跡を追いかけるが、ほんとうに彼女はエミリアに似ているのだろうか?そしてその人格はエミリアに比べると…?美しいロマンスのまま終わらない珍しい話。これも幻想文学かも。

「夢遊病の一症例」ルイージ・カプアーナ:ある屋敷で起きた大量殺人事件をめぐるミステリー。ところが主人の夢遊病下に書き残されたメモに、知らないはずの犯罪の一部始終が…。これぞ理性的視点で書かれた幻想味なき幻想文学の醍醐味。

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