漫画家まどの一哉ブログ
「運は遺伝する」 橘玲・安藤寿康
「運は遺伝する」
橘玲・安藤寿康 対談
(NHK出版新書)
行動遺伝学の最新の知見に基づいて、人生や社会の多岐にわたる遺伝の影響を徹底対談。残酷だが見過ごせない事実とは。
ヒトゲノム解析テクノロジーGWAS(ジーワス)の驚異的威力。単一の遺伝子(モノジェニック)な診断ではなく、多数の遺伝子(ポリジェニック)の関わりから診断する遺伝的影響。巻頭このあたりの詳しい内容を理解することが先ず一つのハードルだが、世帯収入と大学卒業率との経済格差を反映したグラフと、同じ内容(世帯収入と大学卒業率)を純粋に遺伝子のみを調べた結果のグラフが一致するのを見せられるとさすがに驚いてしまう。
「運は遺伝する」と言うが、偶然運悪く事故に遭った人がいたとしても、その人が遺伝的に落ち着きがないとか注意力散漫だった場合、第三者はその人をそもそも運が悪いとは思わないのではないか?
遺伝率と共有環境(コントロール可能なもの)・非共有環境(コントロール不可能なもの)基本的にこの三つをあらゆる事象にあてはめて考えてゆく。一見非共有環境に見えることも、どのような社会集団・友人を選ぶかなどは自覚がなくても遺伝的な支配を受けており、多くの面で遺伝率は高いようだ。
協調性や外交性・内向性などのパーソナリティはもとより、タブー視されてきた知能や容姿まで含めて人間が遺伝子に支配されていることを考えると、「誰でも努力すれば同じように学力を上げることができる」や「犯罪を繰り返す人でも教育によって必ず更生できる」などの平等理念もそのままでは通用しない。残酷なようだがそこは直視して誰をもケアできる社会を考えるべきだと自分も思う。
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